日本へのサイバー攻撃の犯人は誰か

日本やアメリカへのサイバー攻撃の発信源がわかった、という報告です。
日本ビジネスプレスの私の連載「国際激流と日本」からです。原文への
リンクは以下です。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/30816

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<<国際激流と日本 日本へのサイバー攻撃の発信源が明らかに 攻撃
対象の国別に編成されていた諜報機関>>

米国でも日本でも、サイバー攻撃が波紋を広げ始めた。サイバー攻撃
は、コンピューターのネットワークへの攻撃である。日本では衆議院
参議院の各議員の事務所や三菱重工業のような防衛産業の中枢にサイバ
ー攻撃がかけられた。

その発信源はほとんどが中国だという証拠が指摘されている。もし中国
だとすれば、中国のどのような組織が米国や日本のコンピューターネッ
トワークに攻撃を発してくるのか。

その発信源がワシントンで明らかにされた。結論を先に言えば、日米両
国にサイバー攻撃をかけてくる最大の仕掛け人は中国人民解放軍の「総
参謀部 第3部」という組織だというのだ。

米国の首都ワシントンでも2010年から2011年にかけて、サイバー攻撃
被害が頻繁に伝えられるようになった。

サイバー攻撃には大別して2種類がある。第1はコンピューターネットワ
ークへの侵入である。情報を盗むことが主目的となる。第2はコンピュー
ター ネットワークの攪乱や破壊である。米軍の司令部がコンピューター
を通じて前線の部隊に命令を送るのを外部から妨害すれば、軍事的な攻
撃にも等しくなる。

米国では、国防総省関連の電子メール網や、中国批判で知られる有力議
員の事務所のコンピューターネットワークへのサイバー攻撃が相次いで
いる。

米国大企業のサイトにも侵入や破壊の試みがあった。また最新の報告で
は、米側の人工衛星に対して、明らかに中国からの発信とみられるサイ
バー攻撃が仕掛けら れたと指摘された。

<<総要員13万人の通信諜報活動部隊「総参謀部 第3部」>>

さて、こうした背景の中で、これまで国防総省の中国部長などを歴任し
た中国軍のハイテク研究家、マーク・ストークス氏らは、11月下旬、
中国人民解放軍の通信諜報とサイバー偵察の基盤」と題する調査報告
を作成した。

同氏は現在、民間の安全保障研究機関「プロジェクト2049研究所」の専
務理事を務めており、この報告も同研究所の調査結果として公表された。
トークス氏を中心に同研究所の2人の専門家が調査の作業に加わってい
る。

中国軍の動向についての情報がなぜ米国から出てくるのかといぶかる向
きもあるだろうが、秘密のベールに覆われた人民解放軍の動きは、日ご
ろ米国が 超大国ならではの政府や軍の情報収集能力を駆使して驚くほど
詳細に把握しているのである。

トークス氏の報告も同氏自身が中国部長を務めた国防総省の中国情報
にももちろん立脚しているわけだ。

この報告は、まず米国や日本などの政府、議会、軍関連機関へのサイバー
攻撃は、大部分が中国からだという見解を踏まえて、その中国のサイバー
作戦の最大の推進役は、人民解放軍総参謀部のうち「技術偵察」を任務
とする「第3部」だと明記している。

この第3部の従来の任務は「SIGINT」(通信諜報活動)と呼ばれる外国機
関の通信傍受や暗号解読、自国側の通信防御だが、近年はその枠を大幅
に広げ、サイバー偵察、サイバー利用、サイバー攻撃なども活発に実行
するようになった、と記している。現在では中国の対外的なサイバー作
戦の統括はこの第 3部によるのだという。

報告はこの総参謀部第3部全体については以下のように伝えていた。

「第3部は年来、SIGINTを主要任務とし、北京市海淀区の西側丘陵地帯、?
紅旗地区に本部を置き、傘下には合計12の作戦局と3つの研究所を抱えて
いる。第3部の司令官は孟学政少将、総要員は13万と推定される」

同報告によると、中国軍総参謀部は、これからの戦争やそのための態勢
構築にはコンピューターネットワークでの攻防が不可欠だとの基本認識
を確立し、そのためのサイバー作戦は第3部に統括させて、潜在敵の軍や
行政に限らず、政治や経済の関連機関のコンピューターネットワークか
ら特定個人の電子メー ルまでに侵入したり、妨害の攻撃をかける作戦を
強化しているという。このため、第3部は中国全土でもコンピューター処
理能力の高い人材が最も多数、最も集 中的に集まる組織となったとされ
る。

人民解放軍サイバー攻撃に官民一体で対抗せよ

では、この総参謀部第3部という巨大な組織の中で、米国や日本へのサイ
バー作戦を担当するのは、どこなのだろう。(つづく)

古森 義久

メルマガ「頂門の一針」から転載