大国意識丸出しで、世界中から嫌われる中国 欧州でもモンゴルでも、チベットでは僧侶が抗議の焼身自殺

今週は、中国の国際社会での振る舞い方への不快感に関する記事がページビューランキングの上位に並んだ。ランキング2位と3位のタイトルには、両方とも「嫌」という文字が入っている。モンゴルでは空前の反中ムードの高まり第2位になったのは、『お粗末な戦略で、欧州でも嫌われる中国』。
 中国の投資企業がアイスランドで300平方キロもの広大な土地を買収しようとしたが、アイスランド政府に安全保障上の理由で申請を却下された事件を取り上げた記事だ。
 この買収計画の裏には中国政府がいて、資源争奪や軍事的な意図があるのではないかと、アイスランド国内や一部の欧米メディアが警戒感を示した。
 しかし、専門家の意見によると実際の土地は軍事的利用にはほとんど意味がない場所であり、この件が騒がれたのはアイスランド内務省や一部欧米メディアの過剰反応だったと、筆者の宮家邦彦氏は見ている。
 第3位の『モンゴルでますます高まる嫌中ムード』は、鉱物資源をめぐる中国の強引なやり方や中国企業の急速な進出に対し、モンゴルで空前の反中ムードが高まっていることを報じる内容だ。
 筆者の姫田小夏氏によると、その背景には、産業法規を無視するようなビジネス手法、後を絶たない不法入国、衛生観念の欠落、地元女性をほしいままにする素行の悪さなどがあるという。国境周辺の土地が中国人に不法占拠されているという話もある。
 モンゴルにとって中国は最大の貿易相手国で、海外からの対モンゴル投資額でも中国が断トツだが、モンゴル政府は中国一国への依存から脱却しようと、このところ外交方針を大きく転換させている。
 その軸となるのが「第3の隣国政策」で、日米韓や欧州との積極外交に踏み出そうとしている。
 中国に近いアジアの国々にとって中国との付き合い方は頭の痛い問題のようだが、悲惨なのはチベットだ。WEDGE Infinityの記事『衝撃 チベットで相次ぐ僧侶の焼身自殺』 では、今年の3月以降、18歳から35歳の僧侶ら11人が焼身自殺を図り、少なくとも6人が命を落とし、うち2人は尼僧だと報じられている。

焼身自殺の僧侶に容赦なく機銃掃射

 これは厳しさを増す中国のチベット弾圧に対する抗議を表すものだが、自らの体に火を放った者にも容赦なく銃弾を浴びせる中国の武装警察や解放軍に、チベット市民たちは丸腰で対峙している。
 この情勢を受け、欧州議会チベット情勢について緊急決議を行い、米国では政府高官が中国側に人権状況の改善を求めるコメントを発表するなど、中国側を牽制する動きが出ている。
 一方、経済面でもアジア諸国の中国への感情には複雑なものがあるようだと、JBpressでカンボジアのビジネス事情を連載している郄虎男氏は言う。
 2000年代に入ってからカンボジアにも中国、そして韓国勢が怒涛のごとく進出しているが、当のカンボジア人は「中国や韓国の企業が通った後にはペンペン草も生えない」というような警戒感を抱き、露骨に毟り取るようなことをしない日本の進出を望む気運があるのだそうだ。
 先週『世界から好かれる国、ニッポンをもっと売ろう』で、シンガポールやタイ、ベトナムで愛好される日本文化をご紹介したが、上述のモンゴルも相撲などを通して日本への親近感がある。

日本は世界最高のホスピタリティーを生かす時

 東日本大震災後は個人寄付のほか、モンゴルの公務員が1〜2日分の給料を寄付したという事実も『大震災が浮き彫りにしたモンゴル人の良心』が伝えている。
 かつて日本は「エコノミックアニマル」と陰口をたたかれながらも、敗戦からの急速な経済成長とそれを支えた勤勉な労働力に畏敬の眼差しが向けられていた。
 エズラ・ヴォーゲルの著した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』まで上り詰めた後、バブル崩壊と失われた20年を経た今は自信喪失の状態にあるが、日本は世界の多くの国で好感を持たれているのだ。
 外交でもビジネスでも、このチャンスを生かさない手はない。

2011.12.10 JBPress から転載