小学校の英語教育どうする

窓を開けるとプーンとキンモクセイの匂いが飛び込んできました。「い
つまで暑いんだ!もう」と小言が飛び出してくるような暑い日が続いて
いましたが、ようやく秋風を感じるようになりました。空は高くいい気
持ち。

季節の移ろいは正直なものです。前の日までは何の匂いも感じませんで
したが、10月1日の暦をめくると秋風がいそいそと秋の香りを運んでき
てくれたものです。

大慌てで長袖のシャツに着替えて外出すると、気がつけばスーパーの店
先は柿やブドウ、リンゴ、梨、栗など秋の味覚が一杯でした。普段忙し
さに追われるように通り過ぎていた店先には、もうとっくに秋が来てい
たようです。

ところで9月期のe-prosフォーラム(英語教員対象)は、小学校の英語
活動にテーマを絞って開催しました。

小学校に英語が入っても、それが中学校の前倒しのようでは英語嫌いを
つくるだけで無意味ということはずっと前から言われてきました。しか
し今回フォーラム参加者からの声では、事実中学入学時から 英語嫌いの
子の存在が報告されていました。

小学校では英語に親しむ、読み書きはしない。だからゲームや音楽など
で英語活動を楽しむといった、小学校における英語活動の位置づけが図
られ、そのようなアクティビティーも数多く紹介されています。

既にそれを実践している教師も多く見られます。ところが形の上ではそ
んな指導法もありでしょうが、 今回のフォーラムで講師の小泉先生の指
摘からいろいろ考えると、「小学校で英語活動を行う意義、何のために
英語教育か」という基本概念が未だはっきり理解されていないのではな
いかと思ったものです。

小学校で英語活動に携わる教師が、目的も目標も一緒にしてしまい、そ
の上に立って行動をとっているところに問題があるのではないかという
ことです。

小泉先生(昭和女子大学昭和小学校校長、NHKEテレ「プレキソ英語」
監修者。専門は英語教育。幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、大学
院とあらゆる教育現場での英語指導の経験を持つ)からもそのような指
摘はありました。

それは、自分が触れてきた中学校、高校生当時受けた英語の授業が潜在
的に身についていて、小学校の英語活動といっても、これまで身につい
ている英語の授業がじわじわ と思い返され、無意識に従っているのでは
ないでしょうか。

それを少しでも払拭し、本来の目的とする英語活動推進の役目を果たす
のが今回のようなフォーラム(研修会)だと私は考えています。

現在、中学校の英語教師が小学校の英語教育をサポートするために派遣
されるケースが多くなっていますが、この基本理念を理解しないでの派
遣では、中学校の先生もまたそれを受け入れる小学校側も、意識とは別
に中学校の英語教育の前倒しになってしまっているのではないかと思っ
たものです。

今回フォーラムに、参加しようかどうか迷った小学校の先生から、「ワ
ークショップでは、英語を読ませたり、英語での問答などがありますか」
という問い合わせの電話がありました。

この質問自体に、小学校英語活動の趣旨を理解していない、中学校の英
語指導の前倒しが意味されているように思われてなりませんでした。

小学校での英語活動の目的は、英語への興味や関心を持たせるところに
あるのですから、小学校教師を通して子どもたちに気づかせることは何
か。英語を教えることではない。無理やり英語を詰め込んで、英語嫌い
をつくっては何にもならないのです。

今回のフォーラムでは、小学校現場の教師よりも教育委員会の指導主事
の先生が多く見られたことも、いまいち徹底しきれていない小学校の英
語活動の課題だと思いました。

 大釜 茂璋(おおかま しげあき 教育情報プロジェクト代表)
メルマガ「頂門の一針」から転載